宮里大八国際交流基金のバリ島海外派遣も、8日目を迎えました。
今回のバリ滞在では、中学生・高校生の「ドリーマー」たちの海外体験を支えることが一番の目的です。
一方で、私自身にとっても、これまでバリ島で出会ってきた人たちとのご縁を振り返り、これからの沖縄の観光や人材育成について考える時間になっています。
8日目は、ウブドへ。
食、暮らし、田園風景、そして伝統芸能。
一日の中でさまざまな「バリ」に触れながら、改めて「観光とは何だろう」と考える一日になりました。
ウブドへ向かう途中、ホームステイ先の村を通る
この日は、ウブドへ向かいました。
その道中、今回ドリーマーたちがホームステイでお世話になっている村を通過しました。
私や現地のコーディネートをしているバリ倶楽部の方々は、ホームステイ中、ずっと2人のそばにいるわけではありません。
だからこそ、彼女たちは自分たち自身でホストファミリーと向き合い、その家庭の中に入り、現地の生活を経験しています。
車内から見える景色だけでも、彼女たちがホストファミリーと一緒に生活をしているであろう雰囲気を感じることができました。
家々の様子、細い道、地域を行き交う人たち、インドネシアの国旗が掲げられた村の風景。
「今、このような環境の中で、ホストファミリーと一緒に生活しているのだろうな」
そんなことを考えながら、車窓から村を眺めていました。
言葉も文化も生活習慣も違う場所で、家族の一員のように暮らしてみる。
ホテルに宿泊するだけでは経験できない時間です。
彼女たちが何を見て、何を感じ、どのような経験をしているのか。
ホームステイを終えた後に、ゆっくり話を聞いてみたいと思います。
ウブドで、仲間たちとの食事
ウブドに到着してからは、皆さんと食事を囲みました。
訪れたのは「Warung biah biah」。
テーブルに並んだのは、バナナの葉の上に盛り付けられた料理をはじめ、サテや香辛料、ハーブを使ったさまざまなバリ料理です。
一皿一皿をみんなでシェアしながら、バリの味を楽しみました。
せっかくなので、バリのお酒にも挑戦。
メニューには、インドネシアを代表するBINTANG Beerのほか、バリ島の米から造られる「BREM(ブレム)」もありました。
食事は、単にお腹を満たすためだけのものではありません。
その土地の食材、農業、歴史、宗教、そして人々の暮らし。
一つの料理や一杯のお酒からも、その土地の文化を知ることができます。
観光において「食」が大切なコンテンツになる理由を、改めて感じました。
観光は、人と人との関係から生まれる
今回のバリ島滞在を通して、改めて感じていることがあります。
観光は、ホテルや観光施設、アクティビティだけで成立しているものではありません。
そこで暮らす人。
働く人。
地域の文化を伝える人。
そして、その土地を訪れる人。
そうした人と人との関係の中から、旅の価値が生まれていきます。
今回の宮里大八国際交流基金の取り組みも同じです。
私一人だけでは、沖縄の子どもたちをバリ島へ送り出すことはできません。
長年にわたりバリ島との橋渡しをしてくださった方々。
現地で子どもたちを受け入れてくださる方々。
そして沖縄から応援してくださる多くの皆さん。
たくさんの人とのご縁が重なって、今の活動があります。
食事を終え、Masia Villa Ubudへ
食事の後は、この日の宿泊先である「Masia Villa Ubud」へ向かいました。
ウブドの中心部に近い場所にありながら、車が直接入ることのできない場所にあり、周囲には水田が広がっています。
細い道を進んでいくと、にぎやかなウブドの街とはまったく違う風景が現れました。
緑に囲まれたヴィラ。
蓮の花。
そして、どこまでも続くような水田。
ホテルの部屋の前からも水田を見ることができます。
鳥の声やカエルの声、風の音を感じながら、ゆっくりとした時間が流れています。
大規模なリゾートホテルとは、まったく違う魅力があります。
「何かをたくさん用意する」のではなく、
その土地にすでにある風景や暮らしそのものを価値にする。
これは、これから沖縄で観光を考えていく上でも、とても重要な視点だと思います。
ウブドの街と暮らし
ウブドでは、歩くことで見えてくるものがたくさんあります。
細い路地。
住宅。
寺院。
お供え物。
店。
観光客。
そして、そこで暮らしている地域の人たちの日常。
観光地でありながら、生活の風景が完全に切り離されているわけではありません。
「観光地の中で人が暮らしている」という、当たり前だけれど大切なことを改めて感じます。
これは、私の故郷である沖縄県本部町・備瀬について考える時にも重なる部分があります。
地域の暮らしを守りながら、どのように観光客を受け入れるのか。
観光客のためだけの地域にするのではなく、そこに暮らす人たちの生活や文化を大切にしながら、その価値を訪れる人にも伝えていく。
ウブドには、そのヒントがたくさんあるように感じます。
夜はウブド王宮へ
そして夜。
ウブド王宮で行われるバリの伝統舞踊を観に行きました。
この日の演目は、
「The Legong of Mahabharata Epic」
インドの叙事詩『マハーバーラタ』を題材にしたレゴンダンスです。
会場では、ガムランの音色が響き渡ります。
煌びやかな衣装をまとった踊り手たち。
指先の繊細な動き。
特徴的な目の動き。
身体全体を使った独特の表現。
そして、その動きと一体になるガムランの音。
言葉が分からなくても、舞台から伝わってくるものがあります。
目の前で繰り広げられる舞踊を見ながら、長い年月をかけて受け継がれてきたバリの文化の力を感じました。
「文化」が観光になるということ
ここで興味深いのは、単に「観光客向けのショー」が存在しているということではありません。
バリ島には、宗教や地域社会と深く結びついた音楽や舞踊があります。
地域の人たちが文化を受け継ぎながら、それを訪れた人たちにも見てもらう。
文化を守ること。
そして観光によって地域に経済を生み出すこと。
この二つをどのように両立させていくのか。
これは沖縄にとっても重要なテーマだと思います。
沖縄にも、エイサー、琉球舞踊、組踊、三線、地域の祭りなど、数多くの文化があります。
しかし、それを単に観光客に「見せるもの」にしてしまえば、本来の意味が失われてしまう可能性もあります。
大切なのは、
文化を観光のために作り変えるのではなく、文化を守り続けた結果として、それが訪れる人にとっても価値になること。
バリ島の観光から学べる、大きなポイントの一つだと思います。
子どもたちにも伝えたい「観光」の意味
今回の海外派遣では、ドリーマーたちに単に、
「海外へ行って楽しかった」
という経験だけを持ち帰ってほしいとは思っていません。
バリ倶楽部での職場体験。
ホームステイ。
現地の人たちとのコミュニケーション。
食文化。
宗教。
自然。
そして伝統芸能。
今回の滞在を通して触れる一つひとつの経験は、一見すると別々に見えます。
しかし、実はすべてつながっています。
観光とは、その地域にあるものを消費するだけではありません。
人、自然、文化、歴史、産業、暮らしを知る入口でもあります。
そして観光の仕事とは、それらの価値を理解し、訪れる人へ伝えていく仕事でもあります。
今回の経験の中から、子どもたちがそれぞれ何を感じ、何を持ち帰るのか。
帰国してすぐに答えが出なくても構いません。
数年後、あるいは10年後に、
「あの時、バリ島で見たものが、自分の考え方につながっている」
と思う瞬間が来れば、この海外派遣には大きな意味があったと思います。
ウブドの月を見ながら
舞踊を見終え、ウブドの夜を歩きました。
夜空を見ると、雲の間から月の光が見えました。
昼間に車窓から見た、ドリーマーたちがホームステイをしている村。
ウブドで味わった食文化。
水田の中にある宿。
鳥の声やカエルの声。
ウブドの街を歩いて見えた人々の暮らし。
そして、夜のガムランと伝統舞踊。
一日の中だけでも、いくつもの「バリ」に出会いました。
海外へ行く意味は、有名な観光地を見ることだけではないと思っています。
その土地で暮らす人と出会い、
食べ、
歩き、
話し、
文化に触れ、
自分たちの地域との違いを考える。
そして最後には、
「では、沖縄には何があるのだろう?」
と、自分たちの地域を見つめ直す。
海外に出ることで、逆に沖縄のことが見えてくる。
それも、宮里大八国際交流基金で子どもたちを海外へ送り出している大きな理由の一つです。
バリ島での時間も、残り少なくなってきました。
最後まで、一つひとつの出会いと経験を大切にしていきたいと思います。